女の所に一夜だけ行って、その後行かなくなった男がいたらしい。悲しんでいた女が手を洗うところでたらいの覆いをよけたところ、水面に自分の悲しむ顔が映っていたので歌を詠んだ。
我ばかりもの思ふ人は又もあらじと思へば水の下にもありけり
私ほど悲しんでもの思いにふける人はいないと思っていたけれど、水の下にも同じように悲しい顔をした人がいた。
そこに通りかかったまったく無関係なおたく男であるが、ここ最近モテていないので、その歌に共感し、そしてお相手が居ないなら私がお相手になりましょうという気持ちで、余計なちょっかいを出した。
水口に我や見ゆらむかはづさへ水の下にて諸声になく
たらいに水を取り入れる水口に私の姿が映って見えるのでしょうか、蛙も水の下で雄雌一緒に鳴くといいます。悲しむ二人で仲良くしましょう。
しかし、女はおたく男を無視して相手にしなかった。