2022年の漫画原作アニメ。
第一印象は、何回ループしてもラッキースケベが避けられない。悲しい少年漫画の運命である。
もう少し続けてみると、どうも「ひぐらしの鳴く頃に」と「シュタインズ・ゲート」を足して2で割って、最後の仕上げにバトルアクション物にしたような作品という印象を受けた。したような作品というか、しようと意図した作品ではないかと。バトルアクション物であることは間違いない。
この記事にはこのアニメと「ひぐらしの鳴く頃に」および「シュタインズ・ゲート」のネタバレを一部含みます。
主人公が東京から「影の病」という病気?がある日都ヶ島に戻ってくる。というあたりがひぐらしっぽい。基本は日本神話を絡めたオカルトベースの話ですね。
死んでループするのはリゼロっぽい。主人公の網代慎平だけ(でもない)がループを覚えているのはシュタゲっぽい。観測者とか言ってるし。
いろいろな用語を雰囲気で使うところはエヴァっぽい。
なんだけど、この用語がエヴァはキリスト教とかオカルト用語なのだが、このアニメで雰囲気利用されている用語はコンピュータ用語だったりするので、激しく引っかかる。
一番引っかかるのは「俯瞰」という用語で、これは主人公網代慎平の特殊能力というほどではないが、他の人より優れている能力らしい。だがこれが何だかまったく分からない。慎平はピンチになった時に「俯瞰しろ、俯瞰しろ、俯瞰しろ」と言うのだが、その後に俯瞰らしきことをしていないのだ。これが出てくる度に、頭の中にクエスチョンマークが浮かぶのである。そしてこれは慎平の得意な能力なので、毎回毎回、「俯瞰しろ、俯瞰しろ、俯瞰しろ」という台詞があるのだ。
コンピュータ用語としては、タイトルのレンダがレンダリングのことらしいのだが、幸いにも作中にはレンダリングという台詞は出てこない(と思う)。ハッキングという言葉は出てくるが、これもコンピュータや情報機器ではなく、物体の情報とか人の記憶とかに対するものらしい。どうしてそれをハッキング出来るのかよく分からない。ともかく情報操作できるので、銃とかをコピーできる。このコピーというのも、コンピュータの用語としてのコピーアンドペーストのコピーである。つまりコピーした時点では複製は作られていない。ペーストで複製が作られるのだが、この作品ではペーストという代りにプリントという。俺はおっさんだから、このプリントが3Dプリントだと思わずについ印刷だと思ってしまう。
ともあれ、バトルアクション物なのである。なので、敵は主人公たちよりも強く、最終的にはその強い敵に勝たなければならないというストーリー上の決まりがある。つまり、どこかで主人公たちがパワーアップすることになる。この理屈がこれまた分からんのだ。
ひぐらしの世界は異常な世界なのだが、何しろアニメで何シーズンにも渡ってその異常な世界が描写されるので、だんだん世界が分かってくる。そもそも異常ではあるものの、基本は雛見沢症候群と羽入の二つだけ。謎解きというかサスペンス主体なのでじっくり考える暇があり、その分、世界を理解しやすい。
シュタゲの世界は、おたくの社会なので、そこで使われる科学おたくの用語はおれが普段から知っている用語だし、その使われ方もほぼ俺の知っている通りだ。観測者というのはオブザーバーであり、介入出来ないという意味を暗に含んでいる。牧瀬紅莉栖やダルとの議論で、仮説に対するツッコミも入って、擬似科学的な説明がうまくなされている。これも謎解きとサスペンス主体なので、登場人物たちも、見ている俺もじっくり考える余地がある。
それなのにこのアニメはバトルアクション物なのである。主人公は「俯瞰しろ、俯瞰しろ、俯瞰しろ」と叫ぶばかりで、考える時間もなく敵と戦わなければならないのだ。
まあね、「ひぐらしの鳴く頃に」も「シュタインズ・ゲート」も例外的な傑作であり、その作者や制作チームもその後それに匹敵する作品を出せないくらいの飛び抜けた傑作なのである。他人が簡単にそれを超える作品を作れるはずがないのである。その意味では比較されてしまうことが悲劇とも言えるが、まあこれだけ意識して元作品の要素を取り入れていれば、比較するなというものまた無理な話である。
というわけで、他との比較抜きでこの作品を俺が語るならば、何回ループしてもラッキースケベが避けられない、ヒロインがずっと(街の中でも)スクール水着を着ている、バトルアクションアニメということになるだろう。
wikipediaなどを見てみると、どうもこのアニメの「俯瞰しろ」というのは「落ち着け」という意味に近いようだ。いわゆる「頭に血が上って周りが見えなくなる」という状況がある。その時に「落ち着いて冷静に周りを見る」ということを、このアニメでは俯瞰と言っているようである。