昔、現代日本からこの世界に転移してきたおたく男がいた。陸奥の国に特別なところのない普通のモブ男がいたが、その妻の方はモブ男にはふさわしくないよい女のように思えるのだった。
おたく男は、こんなよい女は田舎にはふさわしくない、京の都に連れて行こうと思った。お持ち帰り希望である。くたかけの粗野な女はともかく、この女なら京の都に連れて行ってもよいと思ったのである。
もちろん、女の気持ちが重要なのでそれとなく尋ねてみた。
しのぶ山忍びて通う道もがな人の心のおくも見るべく
陸奥の信夫山のようにこっそりあなたのもとに通う道がないものだろうか。あなたが忍んで隠している心の奥を見てみたいものだ。
女は男と一緒に京の都に行けるならこんな嬉しいことはないと喜んだのである。しかし、夫や子供を捨ててて京の都に行くことになんの躊躇いも見せない喜びぶりに、男は却って気持ちが冷めてしまった。
