図書館で借りた本。
御書物同心日記シリーズらしいが、図書館で適当に手に取ったので1冊目ではなく2冊目か3冊目。
御書物同心で人の良い東雲丈太郎のキャラがよい。
しかし、この巻ではほとんど何も起こらず、ほのぼの4コマ漫画のようなストーリー展開。江戸を舞台にした日常系ほのぼの4コマ。ただし、主役は男(そこそこ若くて独身だが)。特に表題の「虫姫」の話では、虫姫に相当する女の子は姫ではなく庶民だし、虫を愛でるというよりも、虫の描かれた本が好きという程度である。まわりから嫌われているわけでもなく、つまりはドラマがない。ほのぼの4コマである。
かといって江戸の日常が精緻に描かれているかというと、俺は素人だからはっきりしたことは分からないが、あまりそういう印象は受けない。たとえば、蕎麦をつゆではなくて水につけて食べるという話がある。俺は素人だから分からないけれども、江戸時代の感覚というよりは現代の感覚だと思う。グルメ漫画とかでありそうな。まあ、茶人とか特殊な人にはウケるかもしれないが、江戸の庶民にウケるとはとても思えない。
この蕎麦の話も、特にそれで儲けたとかいう話ではなく、古本屋の息子が料理好きで跡をつがないということでしかなく、そして跡継ぎの問題も特に誰かが何かをしたということもなく、だらーんと自然に解決する。
本を探す話は、少しミステリー的な形をしているが、私が推理した内容よりもずっとほのぼのとした犯罪性の低い話で肩透かしであった。逆に髪の毛の話は、ストーリーとは関係ないところで無駄に悲劇性が高いと感じた。それにチャンバラの最中の髪の毛一本の差は極僅かな差だが、紙に挟まった髪の毛はかなり大きな違いで誰にでも分かるのではないだろうか。江戸時代の和紙は分厚くて髪の毛一本くらい紛れ込んでも分からんのかも知れないが。
俺には刺激が足りない本だが、江戸を舞台にした主人公が男のほのぼの4コマ風の小説を読みたい人には向いている本だと思う。
ほのぼのなのに、突然に強盗が死刑になったりしてちょっと驚いたりもした。