ネギ式

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読書感想:不可逆少年

「不可逆少年」というのは、この本の登場人物である家庭裁判所調査官早霧沙紀の使う言葉で、更生不可能な少年のことである。少年法上はすべての少年は更生可能という前提なので、少年法を否定する言葉だ(なお、タイトルを含めてここでいう少年は少女を含む)。

なお、リベラルの俺からすれば、少年に限らずすべての人間は更生可能だが。

それはさておき、この本をミステリだと思って図書館で借りたのだがミステリとは言い難い。殺人事件は起こっているが、犯人はすぐに判明するし、作者が提示する謎もない。作者が初期に提示する謎はないのだが、謎自体は最初から存在していて、物語の後半で示される。だから、読者が現実の事件さえもミステリ脳で解釈しようとするくらいの高度なミステリ脳の持ち主であれば、謎を自ら発見してその謎を解くように読み進めることは可能である。

この本のテーマはタイトルが示しているように、少年法や少年の更生の問題である。そのために、主役(の一人)は家庭裁判所調査官の瀬良真昼である。ところが調査官の仕事は事件の謎を解くことではないし、真昼は謎に気付いてもいない。

というわけで、謎を追う形ではストーリーは進まず、少年犯罪やその背景にある虐待などが語られるので、読むのがつらい。ただし、後半になると何が真実なのかと思わせる事件が起こったり、いろいろな進展があるので面白くなってきて一気に読めた。

なお、この本の最後で主人公の真昼は不可逆少年など存在しない、すべての少年は更生可能であるという信念を披露しているので、そのへんは安心して?読んでよい。

さて、個人的な意見としては、先に書いたことと矛盾するが、更生不可能な少年(人間)は存在するだろう。だが、例外的に少数である。フィクションやマスコミ報道は例外的少数を大げさに取り扱うので、それに法や一般人も対応する必要があると思われてしまうが、少数の例外に対応して法体系が崩れたり、更生可能な少年(人間)が更生できなくなるようなことがあってはならない。例外はないものとして法も人間も対応した方がよいのである。

プログラマー的に言うと、こういう例外はjavaランタイム例外のように扱うべきだろう。それが私のリベラルとしての立場の「すべての人間は更生可能である」という意見表明なのである。

javaランタイム例外がどういうものかを説明するべきだが、それは読者のプログラミング知識を何か前提としないととても説明しきれないので、ここでは説明しない。たぶんjavaの初級では説明できないので、中級から上級の説明になるだろう。

 

 

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