ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:白銀の墟 玄の月(四巻)

泰麒の話であり、泰麒の話であった。泰王驍宗は前巻でこれから活躍しそうな気配を見せたにもかかわらず、活躍しない。これでは自力脱出にした意味はないんじゃないだろうか。それまでにページ数を使いすぎたので王救出の話の枚数を減らすために自力脱出にしたかのようだ。

途中で、これは案外バッドエンドになるのではないかと思ったが、どうにかバッドエンドは避けたようである。とはいえ、バッドエンドに向かうような暗い絶望に満ちた雰囲気こそが小野不由美の書きたいことであって、その後の決着はおまけに過ぎないような気もする。

泰麒の話としては、小さくて私には天の意志が分からないと言っていた泰麒が、成長して、私のすることは何であれ天の意志であるとみなして行動するようになったという話だと思う。あるいは仁の獣である麒麟のひとつの極端な有り様を示したということだろうか。

この話ではうまく行ったけれど、麒麟がこれだけ自律的に行動できるとすると、麒麟が主体となって道を失うこともまた起こる得るのではないかと危ぶまれる。

 

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

白銀の墟 玄の月 第四巻 十二国記 (新潮文庫)

 

 

天の意を受けた王も道を失い、麒麟も主体的に行動すれば道を失いかねない。ましてや天の意を受けていない仏教の指導者や道教の指導者が道を失わないはずがあるだろうか。

今回たまたま主役側(王と麒麟の側)についていた宗教関係者も、場合によっては王や麒麟と敵対することもあろうし、さらに悪い場合には、国が乱れているときに、それに乗じて宗教関係者による圧政が行われるという可能性もある。

私には十二国記世界において民衆の安寧は難しいと思われる。

だいたい農業生産力が大してないのに、民衆を救済しようとする組織の数と規模が大きすぎるんじゃないだろうか。

 

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