ネギ式

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読書感想:竜に選ばれし者イオン

なんちゅうか、違和感MAXなんだけど、面白いとも言える。まず、第一に書いて置かなければならないのは、「竜に選ばれし者イオン」は続き物の前編であるということである。全然終わっていない。

竜に選ばれし者イオン(上) (ハヤカワ文庫FT)

竜に選ばれし者イオン(上) (ハヤカワ文庫FT)

 

 

竜に選ばれし者イオン(下) (ハヤカワ文庫FT)

竜に選ばれし者イオン(下) (ハヤカワ文庫FT)

 

 これがねえ、結構大きな問題なのである。この上下巻でなんらかのまとまりがあると思ったのだが、そうではなくて、単に連続したひとまとまりの話の前半なのである。上巻を読んでいるときはもっと期待したんだけどなぁ。上巻は陰謀渦巻くという感じで面白かったのである。オーストラリアの人が描く中華(和風も入っている)ファンタジーということで、違和感はあったけれども、それはよい違和感とも言えるものであった。古代中国を模したファンタジー世界でありながら、作者は現代的な問題意識もあって、ル=グィンを思わせるなどと思ったりもしたのである。

しかし下巻になってから、それよりもずっと重大な違和感が出てくるのだ。たぶん、原作者と翻訳者の間のちょっとした行き違いがあったのではないかと思うのである。つまり、日本語には女性語というか、女性らしい話し方というのがあって、このテーマの作品で原作者がその事を知ったら、「前半は男言葉で、後半は女言葉で訳して欲しい」なんて言ったのではないだろうか。言いそうじゃないですか、そういうテーマの話なんだから。ああ、しかし、しかし、そこには重大な誤解があったのだと思う。前半というのはこの上下巻全体のことであって、上巻のことではないと思うのだ。下巻から女言葉になるのはおかしいよ。

まあ、それは重大な問題なのだが、もう一つの問題は、下巻になると陰謀が実現してアクションエンターテイメント物になるということである。ああ、陰謀のままの方が面白かったのに。これも陰謀とアクションの比率を1対1ではなく7対3くらいにしてくれたらよかったのになぁ。

さらにさらに、女マイルズ(マイルズ・ヴォルコシガン)かよとか思いながら読んでいたのに、この上下巻の最後付近で体の骨の傷が治ってしまうのである。マイルズじゃないじゃん。マイルズなんて体の傷が少しずつ治ってきたと思ったら、もっと重大なことになるのに。わかってないなぁ。

まあ、表紙の絵がもろに女になっているのも違和感ある。話の中では読者には女だとバレているけれど、他の人にはそう思われていないはずなのに。

上巻を読んでいたときの期待に比べると、下巻を読むのは結構辛かったな。話の後半となる続編では、女言葉の違和感が多少減じるはずだけど、すぐに続きを読みたい気分ではないなぁ。