ネギ式

適当に生きるおっさんのブログ

読書感想:邪魅の雫

こんなこと思うのは、俺だけかも知れないけど、「邪魅の雫」は「ひぐらしのなく頃に」に似ていると思うのである。

 

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

 

 それはともかく、あまり京極堂が活躍しないのは、このシリーズ後半の傾向のような気がする。登場人物が、どいつもこいつも自我が確立していないとうかぐだぐだぐだぐだとつまらないことを考えていて、まともなことを何もしないが、人殺しだけはあっさり実行する。どうにもこうにも。まあ、人間はそういうものかも知れないけど、戦後の結構きつい経済状況でそんな人間がちゃんと生きていけるのか少し疑問がある。

で、「ひぐらしのなく頃に」との共通点だけれど、それは読者が要求されている事、ミステリーの読者が何を解決するべきかという事が似ていると思うのである。それはつまり、事件をつなぐ物語を作るということである。どちらも、個々の事件が問題なのではなく、事件を繋ぐ物語、あるいは世界観を作ることが読者に要求されている。(パズルとして読む場合だけど)

けれどもその要求ははっきりと示されている訳ではない。そこで読者は混乱するのだと思う。また、作者は物語を作るのが仕事だから慣れているが、読者はそうではない。古典的なミステリーなら読者の考えることは何かということは、最初に強く示唆されるものだが。この二つの作品においてそういう示唆を最初に提示しておいても、よかったんじゃないかとは思う。