図書館で借りた本。
昔流行った有名な本だが、読んでいなかったのだ。
「現代社会の不均衡を生み出したものは何か?」という問いに対して「人種(民族)による優劣」という誤った考えに対抗する「わかりやすい究極の単一の原因」を与える本である。
しかし、まあ、どうしてか分からないけれど、何かの説が間違っているという時には、単に間違っていると言えばいいのに、別のおかしな説を持ち出さなければならないというのはどういう訳なのだろうか。
「この説は間違っている」
「じゃあ、真実はどうなんだ」
「真実はこれだ」
こういう風にしなければならないのだろうか? 「真実はそんなに単純じゃない」という答えは許されないのだろうか。
少なくとも、ベストセラーになるためには、単純で分かりやすい新説を提案する必要があるのだろう。
つまり、俺の感想としては、この本で著者が言っていることには十分な説得力がないということである。まあ、あちこちからうまいこと集めてきた資料はそれなりに面白いけど、著者独自の論理の部分は穴だらけだ。
と言うわけで、上巻だけ読んで続きを読むのは断念しました。
これに似た印象を受けた本がドーキンスの「利己的な遺伝子」で、あの本は「創造説」に対抗するため本のはずだが、半分以上を費やして「ミーム」という検証不可能なアイデアを説明しているのだから。まあ、ミームは無意味で検証不可能なだけで間違っているとは言い切れないし、「利己的な遺伝子」という題名は進化の本質に迫る実に秀逸なキャッチコピーなのではあるが。